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ステンレス鋼加工の課題と解決策#
ステンレス鋼は耐食性と強度に優れた素材として、自動車、医療機器、食品機械など幅広い分野で使用されています。しかし、CNC旋盤での加工においては、独特の特性により様々な課題が生じます。
本記事では、私たちが長年の経験で培ったステンレス鋼加工のノウハウをお伝えします。
ステンレス鋼の特性と加工上の課題#
主要な特性#
- 加工硬化: 切削時に表面が硬化しやすい
- 熱伝導率: 炭素鋼の約1/3と低い
- 延性: 高い延性により切りくずが長くなりやすい
- 化学的活性: 高温で工具材料と反応しやすい
よく発生する問題#
- 1
- 2工具摩耗の促進: 短い工具寿命
- 3
- 4加工硬化: 表面硬度の上昇
- 5
- 6切りくず処理: 長い切りくずによる加工障害
- 7
- 8熱の蓄積: 局所的な高温による品質劣化
- 9
技術仕様
SUS304の機械的性質引張強度: 520MPa以上
熱伝導率16.3 W/(m・K)
線膨張係数17.3×10⁻⁶/K
加工硬化指数n = 0.45~0.65
推奨切削速度100~200 m/min
推奨送り0.1~0.3 mm/rev
効果的な解決策#
1. 工具選定のポイント#
工具材料の選択
超硬合金またはサーメットを推奨します。
- 超硬合金: K10~K20グレード
- サーメット: TiCベース、優れた耐摩耗性
- コーティング: TiAlN、AlCrNが効果的
工具形状の最適化
推奨すくい角: 5°~15°
逃げ角: 6°~12°
ノーズ半径: 0.4~0.8mm
"重要: ステンレス鋼では正のすくい角が有効です。切削抵抗を下げ、加工硬化を抑制できます。
2. 切削条件の設定#
基本原則
- 一定の切削速度を維持
- 十分な送りで一気に切削
- 断続切削は避ける
"Take Parts Factoryさんに教えていただいたステンレス加工のコツで、不良率が大幅に改善しました。特に工具選定のアドバイスが的確で、工具費も削減できました。"
田中 花子
精密機械工業株式会社
3. 冷却・潤滑の重要性#
推奨冷却方式
- 1
- 2水溶性切削油: 5~10%濃度
- 3
- 4油性切削油: 極圧添加剤入り
- 5
- 6ミスト冷却: 最小限の油量で効果的冷却
- 7
- 8高圧クーラント: 切りくず排出効果
- 9
効果的な適用方法
- 切削点に直接供給
- 十分な流量を確保(最低2L/min)
- 切りくず排出経路の確保
材料別攻略法#
SUS304(オーステナイト系)#
特徴: 最も一般的なステンレス鋼 対策:
- 切削速度: 120-180 m/min
- 送り: 0.15-0.25 mm/rev
- 切込み: 1-3mm
SUS316(オーステナイト系)#
特徴: モリブデン添加で耐食性向上 対策:
- SUS304より若干速度を下げる
- より積極的な送り設定
- 十分な冷却が必要
SUS420(マルテンサイト系)#
特徴: 硬度が高く、磁性を持つ 対策:
- 低速切削(80-120 m/min)
- シャープな切れ刃が必要
- 断続切削に注意
トラブルシューティング#
ケース1: 工具寿命が短い#
症状: 工具摩耗が早い、切れ刃欠損 原因:
- 切削速度過大
- 送り不足
- 冷却不良
対策:
- 切削速度を20-30%下げる
- 送りを1.5倍に増加
- 冷却量を増加
ケース2: 表面粗さが悪い#
症状: Ra値が目標より大きい 原因:
- びびり振動
- 加工硬化
- 工具摩耗
対策:
- 機械の剛性確認
- 工具交換タイミング見直し
- ノーズ半径の最適化
ケース3: 切りくず処理不良#
症状: 長い切りくずが絡まる 原因:
- 送り過小
- すくい角不適切
- 冷却不足
対策:
- 送りを増加
- チップブレーカー付き工具使用
- 切りくず排出改善
品質向上のための管理ポイント#
1. 工程管理#
- 初品検査: 寸法、表面粗さの確認
- 定期検査: 50個ごとの抜き取り検査
- 工具管理: 摩耗状態の定期確認
2. 測定項目#
- 寸法精度: ±0.05mm以内
- 表面粗さ: Ra 1.6μm以下
- 真円度: 0.01mm以内
3. 記録管理#
- 切削条件の記録
- 工具交換履歴
- 不良発生状況

各種ステンレス鋼対応工具

適切な切りくず形状の例

高品質な仕上がり面
最新技術の活用#
CBN工具の適用#
立方晶窒化ホウ素(CBN)工具は、硬化ステンレスに効果的です。
メリット:
- 長寿命
- 高精度加工
- ドライ加工可能
適用条件:
- 硬度HRC40以上
- 高速切削対応
- 初期投資は高いが長期的にはコスト削減
超高圧クーラント#
300気圧以上の超高圧クーラントにより、切りくず排出性能が飛躍的に向上します。
コスト最適化の考え方#
工具費と加工時間のバランス#
- 高級工具: 初期費用高、長寿命
- 汎用工具: 初期費用安、頻繁な交換
- 最適解: 生産量と品質要求に応じた選択
総合コストの考慮#
- 1
- 2工具費
- 3
- 4加工時間
- 5
- 6品質コスト(不良・手直し)
- 7
- 8段取り時間
- 9
まとめ#
ステンレス鋼の加工を成功させるポイントは:
- 1
- 2材料特性の理解: 加工硬化と熱の問題を認識
- 3
- 4適切な工具選定: 材質、形状、コーティングの最適化
- 5
- 6切削条件の設定: 速度・送り・切込みのバランス
- 7
- 8冷却・潤滑の徹底: 十分な冷却による品質向上
- 9
- 10継続的な改善: データに基づく条件見直し
- 11
これらを実践することで、ステンレス鋼でも高品質・高効率な加工が実現できます。
私たちTake Parts Factoryでは、これらのノウハウを活かし、お客様のステンレス鋼部品を高品質に製造しています。技術的なご相談やお見積りは、お気軽にお声かけください。
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お問い合わせ#
ステンレス鋼加工に関するご質問は:
技術部: technical@take-parts-factory.com
営業部: sales@take-parts-factory.com
電話: +81-3-1234-5678